10月22日(火) 親愛なる犬丸二について

今日は親愛なる犬丸二について。
日記風で書いてみます。
読んでピンと来たら、金曜の夜、ロサンゼルスクラブに来てね。
必ずや素敵な夜にしますので。

○/○
レテパのスタジオ。
9thアルバムのアレンジの頃。
やりたい事が終わらなかったので「今日このまま延長出来る?」とみんなに聞くとカニ君が「あ、この後急遽スタジオのバイトに行かなきゃいけなくて、、他の人が出れなくなったので。」と言った。
俺は「なんだよー、せっかく盛り上がってきたのに、大名盤完成の邪魔をしやがって。〇〇の野郎。」とテキトーなスタジオスタッフの名前を言った。
カニ君は「いや、その人じゃなくてTHEドイの人です。」と言った。
俺はそのバンドは知らなかったので、土井というおっさんのバンドを想像して「あの土井のジジイめ。さっさと引退しろ。」と言った。
カニ君は「いや、女です。」と言った。
俺は「あの土井のババアか。」と言った。
カニ君は「そうっす。」と言った。
彼はテキトーな事案にはテキトーに返事をする事が多い。
俺の中でTHEドイはTHE土井という60歳くらいのババアがフロントマンの古いロックのバンドというイメージになった。

○/○
カニ君に用事があり連絡。
「○/○空いてる?」と聞くと「あ、その日はスタジオのバイトっすね。」と答えた。
俺が「土井のババアに代わってもらえば良いじゃん。」と冗談を言うと、カニ君は「土井のババアは多分無理っすね。他の日にしましょう。」と言った。

○/○
レテパのスタジオ。
俺はスタジオ後は他人と関わる気分になれない。
全部出し尽くしているので早く1人になりたいのだと思う。
なので、スタジオ後は真っ直ぐ家に帰る。
他のバンドは結構飲んだりするらしく、菊竹南は加入した最初のスタジオの後「ごはん行ったりしないんですね。レテパって。」と不思議そうに言っていた。
カニ、南、ハジメ、の3人とは駅で別れるが、ヤハタトシキは高円寺在住なので、缶ビール片手に帰り道のギリギリまで一緒に歩いて色々話してくれる。(スタジオは高円寺。そしてこの頃は俺もユキコの祖母の空き家に住んでいたので高円寺在住だった)
毎回、天下一品のところで右と左に分かれてバイバイする感じが、少年時代の下校の時みたいで面白い。
その時ヤハタ君は「今度ベースメントで企画やるから良かったらぜひ。」と言った。
俺が「へー、ワンマン?」と聞くとヤハタ君は「いや、スリーマン。〇〇とTHEドイだね。」
俺はビックリしてOKストアの前あたりで大声を出した。
「え!THE土井!?あの土井のばあさんが出るの!?」と叫ぶとヤハタ君は「全然おばあちゃんじゃ無いよ。かっこいいバンドだよ。まあ、俺らがもっとかっこいいライブするけどね。ふふん。」みたいな感じだった。
天下一品の分かれ道に来たので、それ以上話さずに別れた。

○/○
下北沢ベースメントバー。
ヤハタトシキのバンド、半夏生の企画。
階段を降りると今日の出演者のポスターが貼ってある。
THE土井はTHEドイだった。(ガラケーラブの俺はSNSとか見ないので、この日まで表記を見る事は無かった)
心の中で「へー、土井のばあさん、調子こいて土井をカタカナにしてやがる。」と思いながら受付へ。
アル中の断酒治療(2019年2月〜)以降は世俗と断絶してたので、ベースメントやTHREEも数年振り。
昔対バンしていた同年代の人達が店長になっていてビックリ。
時の流れを感じるが、自分は独自時間で生きている感じなので(2019年2月以降は完全に独自時間の感覚)いくら時が経っていようとも自分とは関係が無い気がする。

トップバッターはTHEドイ。
かっこいい感じのSEで颯爽と登場した土井さんは、全然ばあさんじゃなく、若いねえちゃんだった。
本当にばあさん(少なくとも絶対に俺よりは年上を想像していた)と思っていた俺は驚いて「カニめ!あいつテキトーに相槌打つ時あるからなー。」なんて思ったのも束の間。
キラキラとカッコいいバンドだったので、見入ってしまった。

ライブが終わると、土井のねえちゃんが話しかけてくれた。
あちらはこちらを知っていてくれたようだった。
話してみると、土井ですらなく大泉咲さんという名前だった。
ドイというのはメンバーに名古屋方面の人間が多くて「ど良い」→「とても良い」という方言が由来と説明してくれた。

色々話したのだが「元々は犬丸二というバンドをやっていたのだが、メンバーの都合で休止してしまい、代わりにその頃同じような状況で暇そうだったバンドのメンバーの寄せ集めがTHEドイなんです。」と言っていた。
彼女の話し方で「犬丸二、というのを本当はやりたかったんだな。この人は。」と思ったので、犬丸二、大泉咲、という名前を忘れないように頭の中で復唱した。

※半夏生の事は今日は割愛。
先日リリースされた「MOMOZONO」というアルバム、とても良いので聞いてみてね。
彼の歌には中野→高円寺あたりの線路沿いの道がよく出てきます。
井伏鱒二の「荻窪風土記」で関東大震災の描写があるのだが、あの時、学生だった井伏さんが野宿したのもこの辺り。
井伏さんが野宿した中野桃園あたりで恋をしているヤックンを思うと、なんだか面白くて微笑んでしまいます。
中央線の大先輩と100年後の後輩と。

○/○
早速、THEドイ、犬丸二、の音源を聞いてみた。
どちらも素晴らしかった。感動した。
でも正直に書くと、最初犬丸二が素晴らし過ぎて、THEドイが少しかすんだ。
だけど、その後THEドイもちゃんと染み込んできて、両方大好きになった。
「犬丸二、見てみたかったなあ」と強く思ったが、先日の大泉咲さんの話し方からすると、もう活動しないタイプの活動休止に聞こえたので、叶わない夢なのだと諦める事にした。

世界は狂っていると思う。
生きるため感覚を鈍感にした人。
それが出来ず敏感で壊れてしまう人。
壊れないけど、歩くのをやめる人。
彼女はどれでもなくて、敏感なまま歌い続ける人だった。
よくこの感じで壊れないな、と思った。
それくらい、真っ直ぐに世界を見て、それを素直に歌っていた。

今日(2024年10月22日本日)も彼女のソロ、犬丸二、THEドイを聞いていたが、今日はTHEドイの「また出会えた」がやけに心に沁みた。
あのメロディーであの声で「昔から知ってる遊びが同じだったんだよ」と歌われた時、泣きそうになってしまった。
唐突だが「もし俺の息子が将来歌う人間になったとしたら、彼女のように素直な歌を作れる人間になったらいいな。」なんて思った。

そして、彼女のソロの「きみと海」を聞くといつも全てがどうでも良くなる。
こんな気分にさせてくれる歌は滅多に無い。

○/○
この日はピーナッズとHOGO地球の共同企画。
場所は高円寺のドムスタ。
「集合演奏解散」という潔い素敵なタイトルのイベントだったが、この日は高円寺阿波踊り。(主宰はそれを知らずに組んだらしい)
高円寺駅からドムスタに辿り着くまで通常5分のところ、1時間はかかるという大混雑で、集合も解散も困難な中、イベントは行われた。
レテパシーズで出演したのだが、THEドイも出ていて嬉しかった。
咲ちゃんと話すのはベースメント以来2回目だったけど、家で彼女の歌を聞きまくっていたので、勝手に身近な人に感じてたくさん話した。
この日はみんなドムスタの音作りに苦戦しているように見えた。
レテパはこういう困難なハコで最高の音を出すのが大好きなので、ライブ前にみんなで相談して、いつも通り自由な発想でとんでもない音を出してやった。(こういう時は模様替えレベルの自由な発想が大事)
ドムスタの長い歴史の中でもあの部屋であんな音を出したバンドはいないだろう。
ざまあみろ!という最高の気分でトリのピーナッズを見たがボロボロ。
このバンドもほんと不器用で、10回に1回くらい感動的なライブをする。
10回に1回の大当たりの時は、全人類ときめくタイプの夢のようなポップな時間なので、この日でピーナッズを見限った人も、諦めずにまた見てみると良いと思う。

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次のレテパフェスはTHEドイにオファーしてみようと思い立つ。
一応最近のドイも見ておこう、と思い西永福のJAMへ。
ガラガラの客席でドイの出番を待っていたら、THEこうがんずのドラムのしんちゃんが入ってきた。
長身の彼がのっそりとした動きで右と左の両方の靴紐を交互に結び直している姿がなんだか寂しそうに見えた。
後日こうがんずのキダ君と飲んだ時、しんちゃんの苦悩を聞いた。
なんて、ボロボロでやけっぱちな人達なんだろう。
しんちゃんはその後こうがんずを抜けた。

この日のドイは少し元気が無いように見えた。
でも、俺は構わずに大好きな歌を一緒に歌って踊って帰った。
歌って踊った後に人と話すのは照れくさいので、誰とも話さずにさっさと店を出て、家に帰ってから、レテパフェスに出てくれませんか?とオファーのメールを送った。

みんなと相談させて下さい、とベースのムタ君から返事が来た後、長い間連絡が無かった。
なんかあったな、と心配していたらやっと連絡が来た。
そのメールには「解散する事になりました」と書いてあった。

俺の好きなバンドはどんどん消えていってしまう。
純粋な人達には活動しにくい場所なのだろう。
ライブハウスって場所は。

ドイが解散すると連絡が来た次の日には大好きだったSEAPOOLというバンドも解散してしまった。
どんどん消えていく、愛しのエンデンジャードスピーシーズ達。
(エンデンジャードスピーシーズ→絶滅危惧種)

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年が明け、最後の猫も壮絶な死に方をした。
離婚する事にして、引っ越した。
この頃は、THEドイの「月」という歌の「ベイビー、ああ こんなはずじゃなかったことは この世にあといくつあるだろう」という歌詞がとても自分の近くにいて、助けられた。
彼女の歌にはよく月が出てくるが、この頃いつもこの歌詞が俺の上に月のように浮かんで照らしてくれていた。

○/○
大興奮のすごい情報を聞いた。
犬丸二が復活するという。
絶対にもう見れないと思い込んでいたので、めちゃくちゃ嬉しかった。
ブルーハーツ、ハイロウズ、ブランキー、たま、俺の好きなどんなバンドだって再結成なんかしてほしくない。
が、犬丸二だけは別だ。
バンザイ。

○/○
西荻窪のフラットに犬丸二企画を見に行く。
すげえたくさんのバンドが出演する昼からのイベント。
俺は勝手に「彼女は、真面目で人に気を使うタイプだから、こういうたくさんのバンドが出る自主企画の主宰は向いていないのでは?ちゃんと出来るのだろうか?」と思っていたのだが、案の定トリの犬丸二の出番の時には疲れ果て(勝手に書いている。俺にはそう見えた)あまり良いライブは出来なかったのでは?という感じに見えた。
でも、そんなのを超えてこっちは「絶対に生では聞けないと思っていた歌達が目の前で演奏されている」という喜びと興奮で、歌って踊ってゴキゲンで帰った。
思った通りに素敵で不器用で分かりやすい人だなあ、なんて思いながらカブで環八を爆走して、高円寺では無く、新居のボロアパートがある経堂に帰った。

このライブの後、彼女はこの日の事をどう思っているのだろう?と気になり、彼女のホームページを見てみた。
そこに彼女のブログがあったのだが「もう最高のイベントでした!共演者の皆さんありがとうございました!」みたいな普通の事が書いてなかったらいいなあ、なんて期待して見てみたら、案の定ダークな感じの文章でサイコーだった。

○/○
大泉咲/「夏のGO!GO!」というシングルがリリースされた。
歌詞に出てくる平和という言葉。
最近よく聞く言葉だが、彼女が歌う「平和」という言葉が俺には一番素直に響いた。

以上、思い付くままに犬丸二、THEドイ、大泉咲、の事を書きました。
ほんと勝手な解釈で思うままに書いてますが、俺が彼女の歌を好きだという事が伝われば大成功です。
それでは金曜の夜、ロサンゼルスクラブで会おう。

PS.レテパフェスについて少し連絡事項。

①前回の第4回の来場者の方、前回のチケットの半券提示で入場料が半額の1500円になります。
受付で提示して下さいね。
※前回のチケットを持っている方もご予約メール頂けると助かります。
※もし紛失した方はメールで教えてくれたら半額で大丈夫ですよ。

②今回のチケットは第6回の半額券になります。
第6回は来年の予定。
今年のレテパライブはこれで終わり。
なのでぜひぜひ。

③フード出店してくれる「トムヤム酒場イーダ屋」はレテパ3代目ベーシストの飯田裕です。(参加作品→2nd「愛してるよ」3rd「永遠に、たまに」4th「ブルースマン」)
ちなみに今、3rdと4thはリミックス、リマスターしています。
また今度詳しく書きますが、当時の愚かな俺が極端なミックスで消してしまっていた、あの頃の雰囲気をちゃんと再現出来ました。
楽しみにしてて下さい。絶対にみんな驚くと思う。
あの頃のレテパは凄いんだから。

④今回のレテパフェスはレテパ全アルバムに関わっている馬場友美がPA(音響)です。
彼女がいなければ、レテパシーズの行進はとっくに止まっていたでしょう。
PAも馬場ちゃんで百人力だし、この夜のロサンゼルスクラブは絶対にサイコーの音が鳴ると思う。
先日オーナーのロハスさんが亡くなってしまい、今後はカニユウヤがこの店を続けていきます。
素晴らしい場所です。みんなで応援しようね。