先日、故郷空知の岩見沢の祖母が大往生で亡くなったので、葬式に行ってきた。
祖母の家での自宅葬だったので、久しぶりに祖母の家に遊びに行けたみたいで、懐かしい気持ちになれた。
祖父母の家は実家のそばにある。
高校生になり、ジャズやフォークに取り憑かれた俺は、父と仲が悪くなり、ほとんど祖父母の家にいた。
祖父はその頃もう痴呆が酷く、古宮豆腐店だった頃の記憶で、夜中になると「豆をうるかす」と言って家を出てしまい、徘徊したりしていた。
が、祖母は変わらず、口数は少ないが優しく、俺はいつも安心して実家ではなく祖父母の家に帰っていた。
その頃は美しいアングラなものに取り憑かれていたので、毎日ジャズマンの亡霊にアルトサックスのマウスピースを喉にぶっ刺された状態で呼吸している気分でしたので、発狂寸前で、この祖母がいなかったら、多分道を踏み外していたことでしょう。
お陰様で、立派なレテパシーズのボーカルになれました。よかったよかった。
レテパのレパートリーではありませんが、当時の感じがよく分かる「アルトサックス」という歌があります。
「アルトサックス」
冬の寒い道を歩き 丘の上の学校に行く時
僕の息が白く白く 舞い上がるのが嫌だったので
僕はアルトサックスを買って それをのどの奥に刺した
それから僕の吐く息は全ておかしな音に変わった
のどから流れる汗は気にせず 笑い声は上で鳴った
ため息は下で鳴った 右から左から僕が聞こえた
町の外れの田んぼの水に僕の息はあぶくを作った
汗と泥にまみれても錆びず アルトサックスは金色に光った
学校の窓を全て開けたように 昼の風はアルトサックスを
通って僕の肺に入り それからまた出て音を鳴らす
僕が自転車で走った距離に 僕の息継ぎが転がっていく
僕の声がおかしな音なら 昼の風は僕の地獄だ
今でも聞こえるアルトサックスは とっくに僕の口から抜けて
どっかの誰かかどっかの何かに プランプランと刺さっているはずなのに
僕の息は季節を越えて 遠い国の星座を抜けて
上から右から左から後ろから 追いかけるように聞こえてくるよ
追いかけるようにアルトサックスが
葬式のあと、疲れたので変な時間に寝たら、変な時間に目が覚めた。
実家の自分の部屋。
窓からは月光。久しぶりに月光で目が覚めた。
その月を見ていたら「やっぱりこの月と他で見る月が同じ月とは思えないんだよな。」とあらためて思った。
ちょうどシングルを何にするか決める締切の日でもあったので、この時の月光が「長野県のお月様」をシングルにする気持ちを後押ししてくれた。
(大丈夫大丈夫、任せなさい。と言われた気がした。もし評判悪かったら、月光とハジメちゃんのせいだ。)
通夜、葬式、と強行軍で東京に帰りましたが、帰る次の日の天気予報は、雪。初雪のようでした。
でも、もし次の日まだ北海道にいて初雪を見たとしても、何も感じなかった事でしょう。
雪解けの春から初雪までをちゃんと過ごしていないと、初雪はただの自然現象でしょう。
だけど、ちょうど紅葉がピークだったのですが、紅葉は見た瞬間にちゃんと、途方も無いようなキレイな郷愁が襲ってきました。
初雪はそうはいきません。多分。
前日に帰ったから想像でしかないけれど。
PS.ベッドからの月。
「長野県のお月様」配信まであと5日です。